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職業、裏ビデオ屋

― 愛した少女を生業に年収一億円を稼いだ男
著・孤天我神
第八部 都合のいい美談

 あんぐら堂の物語ももう少しで終幕である。

 この原稿の執筆にあたっては複数回に分けてあんぐら堂本人から聞き取りを行い、その音源を素材に構成、そして音源が尽きたら再度聞き取り、という流れで行ってきたのだが、何度会ってみても、このあんぐら堂という男は本当に不思議な男だと感じさせられる。例によって、服装はいつも適当だ。ジャージの時もあれば、緩めのジーンズをラフに履いていることもある。髪も特にこだわりを感じさせない茶髪で、持ってるバッグはお世辞にも高そうとはいえない。靴は量産型のコンバース・オールスター。それも鉄板のホワイト。いや、スニーカーを履いてる時はまだマシで、確率でいえばサンダルを履いている率の方が高い。

「最近はどうですか?」

 会うとまずそう尋ねているが、返答はいつも一緒。「いやぁ、特になんもないですねぇ」。口調に覇気はなく、かといって厭世的というほどでもない。もちろん、何もしていないわけではなく、聞いていくと新しいプロジェクトを動かしていたりする。ただ、心が踊っていないのだ。その様子はどこか動物園のライオンのようでもある。食うには困ってない。安全な環境もある。だが、なにか物足りない。そして、その何かが分からない。

 いや、エンディングを先取りしてはいけない。ひとまずは話を続けよう。さて、どこまで書いただろうか。そうだ、ミクルがあんぐら堂の子を宿したのだった。2011年、小説執筆の挫折と311の陰鬱な空気にあてられ、心が完全に折れつつあったあんぐら堂の元に届いた一通のメール。そこには新しい命の息吹の知らせが綴られていた。




「最初は堕ろすことしか考えてませんでした」

 そうあんぐら堂は言う。ゲスな彼らしいと言えば彼らしいが、二度の逮捕、就職の失敗、そして一世一代の小説家への挑戦にも挫折した直後だということを考慮すれば、正直、無理もない。

「まず自信がありませんでしたから。子供っつったって、どうやって面倒見てくの? どうやって養うの? って感じで。執行猶予付きのニートですからね。あとでミクルに『若い時代を犠牲にした』みたいに責められても嫌でしたし。だから君のためにも今回は諦めよう、と説得したんです」

 苦し紛れとはいえ説得力はある。たしかに、赤ん坊の父親として評価するなら、当時のあんぐら堂はほぼ「0点」だ。執行猶予のある無職、さらには生粋のロリコンで、まともな会社では働けない社会不適合者。あるいは、暴力を振るわないこと、酒を飲んで暴れたりしないこと、などは評価しうるかもしれないが、それも減点がないだけで加点というわけじゃない。将来性云々以前の話である。

「普通に考えればありえない。でも、ミクルは頑として『産みたい』の一点張りでした。俺は無職だし、貯金だってそのうちなくなるし、と言ったんですが、『私が働くから』と。決意が固いんです。なんだか、ここで堕したりしたら、それこそメンヘラ化しそうな勢いもあって。それで、これはもう腹をくくるしかないか、となったんです」

 結局、ミクルの強い意志に押され、あんぐら堂は子を持つ覚悟を決めた。最初こそ気が重かったが、あらためて考えてみると、今さら怯えることでもないか、とも思えた。そもそも未来に希望なんてないのだ。いや、このままただ生きてたら、それこそ自殺しかねない。むしろ子供を育てるということになれば、その責任感を頼りに生きれるかもしれない。そういえば、母親も孫を見たいと言っていた。散々裏切り続けてきたのだ。孫を見せることが、せめてもの罪滅ぼしになるなら、それもアリじゃないか。

「実はその1年前くらいから、僕のミクルに対する扱いはひどいものだったんですよ。デートするにもなんで俺が奢らなきゃいけないの、みたいな感じで割り勘にしてたし。埼玉と神奈川で遠距離だったから、毎週末、向こうが会いにきてるのに、電車代もあげなかったりで。17歳も歳が離れてるのに、ひどい話です。自分に余裕がなかったから、そういうのも気づけなかったけど、あらためて思うと、すごい尽くしてくれてたんだなって気づいて。それで、あらためてプロポーズすることにしたんです」

 それはあんぐら堂なりのけじめで、当然、ミクルはそれを受け入れた。すごい話である。おそらく本人が思っているよりもずっと。

 そもそも、ミクルはふみコミュで知り合った中学生だったのだ。その後、妙に馬があって付き合うようになったが、あんぐら堂は逮捕され、同時に年齢も名前も嘘だったことがバレた。普通なら、そこでおしまい。だけど、ミクルはそれでも付いてきた。さらに、ここ1年は小説を書くといいながら、合法ドラッグに明け暮れ、懸命に尽くすミクルに対してもぞんざいな扱い。果ては身勝手にも自死まで検討していたのである。

 なぜ、そんな勝手な男を見放さないのか。母性? あるいはそうかもしれない。ただ、ロジカルな回答などきっとはなからないのだ。槇原敬之の曲名を借りれば「どうしようもない僕に降りてきた天使」。出会うべき二人が出会った。それだけの話なのかもしれない。




 さて、心機一転あらためてゼロからのスタートだ。いや、多少の貯金はあった。その元手を活かして真面目な夫、真面目な父になろう……といきたいところだが、あんぐら堂にとってはそんな簡単な話でもまたない。

「実家暮らしで家賃はかからなかったんで、まあ月に30万も稼げればやってけるだろうって思ってました。とはいえ、就職するかって言っても塾の経験があるから、どうせすぐ壊れるのは分かってます。工場ならいけるか、とも考えました。近所に紙コップ工場があるんで、そこならただ紙コップをひたすら検品するだけだし、人間関係に心を病むこともないだろう、と。とはいえ、延々とコップを確認し続けるって考えたら、やっぱり気が狂う。まあ無理だな、と」

 ラーメン好きを理由にラーメン屋で働くことも考えた。数年修行して独立すれば、一国一城の主になれる。しかし、ラーメンに対してそれほどの情熱があるか、と言えば微妙で、シミュレーションすればするほど「飽きて嫌になる」ことが目に見えていた。さて、どうしたものか。活路はあるのか。すでに30代。全く新しいことに挑戦するには、ちとばかし遅めだ。そういう場合、まずは一度、来た道を振り返るに限る。

「自分に何ができるか。真剣に考えた結果、やっぱりエロしかないな、と思ったんです。エロ動画を作って、それを売ろう、と」

 実はその約半年前、あんぐら堂は一度だけエロ動画を販売したことがあった。ミクルが高校卒業後に行こうとしていた専門学校のための入学金を稼ぐ必要があったからだ。

「10月くらいだったと思います。その頃、いつも鬱々としていた僕を見かねて、ミクルは『私が働いて養ってあげるよ』と言ってたんです。そのためにも医療系の専門学校に行きたい、と。たしかに、仕事しても続かないし、ヒモになるのも悪くないかななんて思ったりしてたんですが、ミクルの家も裕福ではないから、入学金くらいは自分で用意しなきゃならず、さてどうしよう、となって。その時に思いつきでDLマーケットで動画を販売してみたんです」

 動画のモデルはミクル。とはいえ、ハメ撮りではない。制服を着たミクルの顔を隠して、パンチラを撮影したのだ。設定は家庭教師の盗撮で、内容はいたってソフトだった。「まあ顔も出してないしそんな売れはしないだろう」という予想に反し、その15分程度の映像はサクッと10万円くらいの売上を叩き出した。

「これしかないって思いました。あんな適当なので10万円になるんだから、ちゃんとやれば月30万くらいは稼げるだろう、と。とはいえ、ミクルばかりを撮るわけにもいかないので、モデルを見つけなきゃいけない。問題はミクルがどう思うかですが、僕が普通の仕事をできないことは向こうも分かってたし、金がないとギスギスしてDVに発展しかねないって説得して、結局、『セックスはしない』という条件で認めてもらいました」

 早速、試しに掲示板でモデル募集をしてみた。ギャラの相場も分からないので、ハメなしで5万円と提示、すぐに募集があった。

「最初に撮ったのはすごい簡単なやつです。着エロで、局部のギリギリを狙った感じのイメージビデオ。ハメどころか絡みも一切なし。女の子もさすがに18歳未満は危険だったので、20歳くらいの子でしたね」

 イメージしたのは、当時、あんぐら堂がズリネタとして購入していたまほ(誌宝)こと三枝多朗の作品だった。そう、ガチ少女の無修正動画を制作販売し、裏ポルノ業界において一世を風靡した人物である。実はあんぐら堂と三枝がメールのやり取りをしたことがあった、というのは、以前にも書いた。実はこの春、すでに三枝は逮捕されていたのだが、それが報道され明るみに出たのは、その数ヶ月後のことである。

「がっつり真似しましたね。まほが人気あったから、それっぽく出せば売れるんじゃないか、と。あと汚いやり方ですけど『モザイクはどこにもありません』みたいに書いて。実際、局部が映ってないんで嘘ではないですし。あと年齢についても『書けません、お察しください』みたいにしました。あたかもまほの模倣犯かのような感じを演出したんです」

 売り場はまほの作品も売られていたDLマーケット(現:Gcolle)。あんぐら堂にとっては、その作品は正式な処女作のようなものでもあり、とりあえずの小手調べくらいの感覚だった。妊娠発覚からすでに半月が経とうとしていた4月。桜は満開だった。




 冬来りなば春遠からじ、とはよく言ったものである。

「びっくりしましたね。いきなりランキング1位になったんです。バンバン売上速報が入ってきて、もう止まらなくて。4月の上旬に売り出したんですが、4月だけで売上は100万円を超えてました。乳首すら映ってないイメージビデオなのに、これはすごいぞ、と。それと同時に、なるほど、児童ポルノ風動画が売れるのか、と気づいたんです」

 これまであんぐら堂は児童ポルノの転売をして金を稼いできた。だから児童ポルノが金になるということは、十分に分かっていたことだった。だが、児童ポルノ「風」動画がここまで売れるとは盲点だった。散々、裏ビデオをコピーし、また一人のロリコンユーザーでもあり続けてきたあんぐら堂である。本物の児童ポルノらしさを演出する上で、必要な知識には事欠かない。

「チャンスだと思いましたね。なんせ一作品で100万円ですから。そこからはとにかく募集をかけまくって、撮影しては出品し、また撮影して、というのを繰り返しました。作風はすべて擬似児童ポルノ。出せば出すだけ売れて、もう飛ぶ鳥を落とす勢いでしたが、実はここでちょっとやらかしてしまったんです。というのも、いまが稼ぎ時だと思って、ついでにコピーDVDの転売も再開しちゃいまして。これが落とし穴でした」

 そう、猛烈な追い風が吹くこのタイミングであんぐら堂はコピー商品の販売元から訴えられてしまったのだ。ヤフオクのかんたん決済であれば足がつかなかったところ、モバオクにまで食指を伸ばしてしまったのがいけなかった。賠償金は600万円。貯金がほぼ飲み込まれる形となった。満開の桜を一気に散らすような突風。一瞬はめげかけた。しかし、そんな時もミクルは「もしお金ないなら私も一緒に働いて払うよ」と言ってくれた。

「これまでもミクルには感動させられてきましたが、この時ばかりは泣きましたね。人の言葉で感動して泣くような感情が自分に残ってたのか、と驚きました。愛を知ったと言いますか。凹んでる場合じゃない、いよいよ頑張らないとな、となりました」

 600万の損失は大きかったが、女神の微笑に支えられ、その勢いは削がれることがなかった。むしろ、これまでになかったほど、あんぐら堂はガムシャラに働いた。あるいは訴えられることがなければ、初月の100万円であぐらをかいていたかもしれない。しかし、そんな慢心はもはやなかった。11月には子供が生まれてくるのだ。とにかく今は稼ごう。

 ある時、募集にかかった少女がいた。一目見て「この子は絶対に売れる」と直感したら案の定、一作品で300万円になった。感覚は冴え切っていた。撮影内容も徐々に変えていき、設定も色々と考えた。アイディアはことごとく当たり、出せば出すほどに作品は売れた。

「正直、お金以上に楽しいっていう思いが強かったかもしれません。高校の時に官能小説を書いていた時のような感じで。自分が作った作品がバンバン売れていくんですよ。それ以上の評価はないじゃないですか」

 以前から転売などでもお金は稼いでいた。しかし、それらは結局、自分の作ったものではなかった。今回はそれとは違う。テーマ、設定から自分で考え、自分で撮影し、出品時のサムネイル画像から説明文まで、すべてを自分でプロデュースしている。販路を拡大し、FC2に売り出してみたら、こちらでも飛び抜けて売れた。確かな手応えに、もはや自分がクリエイターの一人であることを確信した。

「ようやく居場所が見つかった気がしました。ずっと何者かになりたいと思って来たけど、ようやく何者かになれたと感じたんです。小説家やマンガ家に憧れてたけど、それよりもこっちの方がしっくりきてる気もしました。このゲスな感じが自分らしいなって」

 週に3回は撮影して、それ以外の時間はひたすら編集した。やがてミクルに内緒でハメも撮るようになると、売上はますます上がっていった。これまでのすべての経験が、制作活動においては活きていた。小説執筆の経験は構成力として活きたし、日記サイトの経験は販売時のキャプションライティングに活きた。作品の質、オリジナリティ、世界観、いずれをとっても、明らかに他より抜きん出てるという自覚があった。周りの売り手がみな雑魚に見えた。

 そして、11月になった。ミクルから生まれてきた第一子は娘で、母子ともに健康だった。

「感動しました。人のために生きるんだって感覚を初めて感じました。この子がいれば、もう自殺なんて考えることもないな、と。これまで自分のためだけに生きてきたけど、これからは家族のために生きようって、そう本気で思ったんです」

 いやはや、この物語の始まりにおいて、誰がこんな展開を想像しただろうか。僕自身、ゲスい男のゲスい評伝を書くつもりでいた。しかし、蓋を開けてみたらどうだ。ゲスいロリコン男が手篭めにした少女からの深い愛を受け、それと同時に少年時代からの屈折を昇華させるように自己実現まで達成? 愛する家族もお金も全て手に入れちゃいました? そんな都合のいい美談で終わらしていいのか? ポリコレ的にもまずいんじゃないのか?

 いいや、それが現実なのだ。そして、現実において、愛は偉大だった。あんぐら堂、ミクル、そして生まれたてのを祝福するように、売上は伸びる一方で、4月からのたった8ヶ月間にもかかわらず、2011年度の売上は5000万円に到達した。そして、その次年度、売上はついに1億4千万円に到達することになる。


(つづく)